海外飛び出すことになったブログ

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Book Review『帰ってきたヒトラー』

 

帰ってきたヒトラー 上 (河出文庫 ウ 7-1)

帰ってきたヒトラー 上 (河出文庫 ウ 7-1)

 

 好き度: ★★★★☆

 

ああこれは問題作というか話題作になるよなそりゃと。まだ消化しきれない。ヒトラー、ナチズム、ユダヤ人虐殺については無数の作品が作られ続けている中で、この本は感情より理性に働きかける部分が多かった。小説なんやけどね。

 

作中はヒトラーの一人称でストーリーが展開していく。ずっと読んでいると「あれっ、誰目線やっけ?作者?いやいやヒトラーか」と何回かなった。

 

なにかを狂信的に信じる人は、土台•根本から考えが違っていて、その人の中では完璧に論理立てられているので外から口を挟む余地がないという絶望感を味わった。狂信的という言葉にはネガティブなニュアンスが漂うけど、他に言葉が見当たらない。これは心底イスラームを信じる友人と話しているときに陥る感覚とまったく同じ。疑問も投げかけても彼にとってみればそれは単に理解が足りないから。これって政治思想にしても宗教観にして仕事論にしても同じことがいえて、出発点が違う人の理解をえるとか説得するというのは神業なんだなと。それを切って捨ててしまうのが一番楽だけど、民主主義ゆえにある国民、県民としてひとつの結論を出さなければならない場面では切り捨てていてはダメ。

 

クレマイヤー嬢というヒトラーの秘書的ポジションについた女性は心の底からヒトラーに叫ぶ。「この人たちが殺されたのか何かの間違いだったなら、それで全てOKだと言うの?ちがう。本当にまちがっていたのは、ユダヤ人を虐殺しなければと、だれかが考えついたことのほうよ。ロマも、ゲイも、自分にとって邪魔な人間はぜんぶ殺してしまえばいいと、そう考えたことがまちがっていたのよ!」(きっと)似たような教育を受けて似たような価値観を持った私には至極しっくりくる意見なんだが、ヒトラーの返答を見ていると"そもそも"が食い違っている。。

 

アメリカの本やら展示やらでは普通にみられる「ヒトラームッソリーニヒロヒト」という並び。タブーとして問答無用に絶対悪とみなす期間はもう去って、何が上手く機能しなかったのか、どこでボタンのかけ違いが起きたのか、考えないといけない。考えようとするといろんな方面から、ヒトラー賞賛するのかけしからん!、戦争を肯定しようとしている危険分子!、とかわけわからん野次がとんでくるかもしれないが、あくまで野次なので考えるべきことは考えよう。考えることを非難するのはナンセンス。

 

難しい話ぬきにしても、ある程度高尚でハイコンテストな笑いがたくさんある本。全然わかっていない部分もあるけど、ドイツやっぱり好きだなー!

 

それでは、また。