Book Review『平和を創る発想術』
- 作者: ヨハンガルトゥング,Johan Galtung,京都YWCAほーぽのぽの会
- 出版社/メーカー: 岩波書店
- 発売日: 2003/08/07
- メディア: 単行本
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好き度: ★★★★☆
好き嫌いで判断するのに適さないジャンルのブックレット。平和学というのがどういう学問なのかをかじってみたくて読みました。
(50頁しかないのでほんまにかじっただけ!)
ヨハン•ガルトゥングさんは新しい学問である平和学の権威で、ノルウェーの人。
国連機関を中心に国際紛争解決に向けたコンサルタントの仕事も多い、とのこと。すごい、平和コンサルってまさに私の理想。
コンサルなだけあって、紛争解決へのアプローチをグラフでも説明しています!おもしろい!(╹◡╹)
ーー紛争転換ーー
まず、紛争をどのように捉えるかという、分解して考えるのがこの段階。
私がぱっと思いついたのは対立するA案、B案があったら、折衷案Cがいいだろうという至極単純なもの。
しかし、彼の考え方はそこから発展して、x–y軸で考えます。
原点(0,0)から右斜め上45度にのびていく直線y=x上に、かつ原点からなるべく遠い点にくる「紛争転換(Transcend)」になるアイデアを出そうというのがキモ。
たぶんy=2xとかでもよくて、なんせ第一象限で原点、x軸、y軸から遠いところが最強の解決アイデアだと言っているのだと思う。
例えば、イスラエルとパレスチナのエルサレムへの関わり方を考えたケース。
↑本の中のグラフを頑張ってexcelで再現(笑)
点A: 国連統治、国際警察介入
点B: イスラエルの完全統治
点C: パレスチナの首都設置
点D: エルサレムを東と西に分割
点E: 訪問権と居住権の区別、共同管理 ←紛争転換!
他の紛争においてもEのようなアイデアを出すのが最善とするのが彼の主張です。
ーー和解への手法ーー
次に、和解するために踏むステップというか要素。
賠償、法廷での告白、カルマなど12が挙げられているのですが、このうち最強なのが「ホーポノポノ的解決」というもの!
聞いたことないけど、サウンドからしてもはや平和を醸し出している、、!
ポリネシアの人びとにとっての「癒し」の概念。紛争が起きた後、加害者、被害者だけでなく、それぞれの家族や友人らが集まり、長老の前で言い分を話し合う。そのあと、紛争の原因、事実、加害者のわび、被害者側の許し、そして双方の再発防止策をまとめた文書を作成。長老が読み上げ、双方で確認しあったあと、燃やしてしまう(水に流す)。
これには他の11要素がすべて含まれているのです。最強。
ーー前提としての深層文化ーー
いつもは人々の心の中に眠っているが、紛争なんかのときに表面に出てくる文化を深層文化と呼ぶそう。
風土や気候、歴史によって考え方や捉え方のクセがあるのは体感としてみんな分かっている。そのことだと思います。
対立の形や解決方法に大きな影響を与えるため、互いに深層文化を理解しあうことがカギとなります。
例えば、、
ロシア人は「二元論的で、垂直的で、悲観的」
アメリカ人は「二元論的で、水平的で、楽観的」
日本人は「陰陽道的で、垂直的で、実務的」
フィーリングでもうなずける。
この潜在意識は、博物館や通りの名前などの公共の場に現れているものをみるとわかりやすいらしい。
フランスの通りには、軍人、政治家、芸術家などの名前がつけられていることが多い。
一方の日本は、地形や自然、土地の人々の営みにちなんだ名前がつけられていることが多い。確かに!
「うどん県」うわぁぁぁぁ(笑)
2年間海外ですごせば、当地の深層文化を発見できる場面が多いだろうし、そのあたりは青年海外協力隊に限らず留学やワーホリすることの大きな意義だと思います。
ーー平和の経済ーー
歴史的に社会主義、共産主義は敗北して、今は資本主義がメインですね。
ただし、完璧な経済システムなわけではない。
高校の現社の先生が「資本主義はダメなシステムだけど、それよりマシなのがないんだよ~」と著名な人の言葉を引用したのか、言っていました。
平和経済の条件は、「平和的な製品を作り、平和的な取引を築くこと」だそう。取引関係が平和でも、扱う製品が兵器であれば✖、平和な製品でも取引関係が搾取的であっては✖、とのこと。
言わんとすることは全面的に賛成なのですが、平和的か否かの判断ってかなり難しいと思うんですよね。。
兵器がすべて平和的でないと言えるのか?原子力の原料の取引は平和的か?新興国の安い労働力でつくられた製品の取引は"戦争的"なのか?等々。
金融、経済に少々身を置いたのでとても興味がある。
大学の時フェアトレードについて発表したけど、もっと真剣に研究してもっと思考すべきだった。はーーー
たった50ページの本で、いろんなことを考えられます。
おすすめ!
それでは~