Book Review『ルポ資源大国アフリカー暴力が結ぶ貧困と繁栄』
好き度:★★★★☆
アフリカ貿易に携わる友人に勧められた本。アフリカの本ってずしーんとくるものが多いのでさくさくは読めないけども、地道に知識蓄積してます。
成長すさまじいアフリカ。この本は毎日新聞のヨハネス特派員の白戸圭一さんが2009年に書いたルポなので、もう変わっている部分も多いかも。というか変わっていてほしい、前進してほしい要素がつまっています。
章立てからして、、
第一章 格差が生み出す治安の崩壊ー南アフリカ共和国、モザンビーク共和国
第二章 「油状の楼閣」から染み出す組織犯罪ーナイジェリア連邦共和国
第三章 「火薬庫」となった資源国ーコンゴ民主共和国
第五章 世界の「脅威」となった無政府国家ーソマリア民主共和国
(><)
なんとなくアフリカ各国のキャラクターがつかめてきたので、このラインナップはむむむ。 。
ー南アの格差ー
南アはいろんなところで治安の悪さが取りざたされてますよね。ケープタウンの民間研究機関「安全保障研究所」の研究員・ピーター・ガストロウ氏の言葉。
民主化後、アフリカの様々な国から入国者が押し寄せ、失業者の中から犯罪組織に加わる者が相次ぐようになったのです。その結果、南アは麻薬密売、人身売買、マネーロンダリング(資金洗浄)、詐欺、希少動物の違法取引など様々な組織犯罪の国際的な中継地点になっています。(P.36)
南アはアフリカで最も経済水準の高い国ですが、南アよりはるかに貧しい他の国々の方がずっと治安が良い。要するに、誰もが一様に貧しい社会では犯罪、特に犯罪組織は成立しにくい。巨大な所得格差が生じた時、貧しい側は犯罪を通じて『富』にアクセスしようとする。(P.37)
富へのアクセス、という言葉が印象的です。「お金持ちになりたーーい!」と思えば大企業or外資系で職を探す、投資で一発あてる、はたまた一念発起で企業、などの発想に至るのが一般的だと思います。
ですが、南アではかたぎな仕事をコツコツ頑張っても、永遠に富裕層には近づけないほどの所得格差があり、強硬なショートカットとして犯罪を選ぶ。
程度は全然違うけど、先進国においても格差の固定化って大問題だと思います。
協力隊の2年間が終わった後の進路について模索していますが、一つの選択肢として海外大学院進学というのを検討しています。学力、経験に加え、最もシビアなのがお金。イギリスの大学院に1年行くと、授業料・生活費合わせてざっと500万円いるらしい。アメリカの私立大学院に1年間いくと1,200万円という話もあるので、それと比べればまだ良心的と言えますが。が、必須の英語能力検定IELTSは受験料だけで約25,000円。
あらゆる投資の中で最も投資効率が良く、確実だといわれるのが教育への投資です。それにしても、お金かかりすぎじゃないですか?
貧乏人は大学院に行けない、修士必須である職業にはつけない、そいういう職は概して高給取り。なんだかなーと思います。
(私立大学に通わせてもらった身としてはそれだけで十分恵まれてるのは承知の上で。)
どんどん世界が高学歴化してくる潮流ってどこかのタイミングで転換しないのかなーなんて想像してしまう。欧米?だといっこめの職につくのに、大学、大学院、インターン経験などが必要で働き始める時点で30歳とかざらにあるとも。変なの。
アパルトヘイトや身分制がなくなったら、また新たな壁が現われるんですね。
アフリカの組織犯罪の特徴は、個々の組織が数人から数十人と小規模なことだ。たとえば、コカインの生産から密売までをピラミッド型の指揮系統で統制する中南米の巨大麻薬組織とは対照的である。•••裏社会全体を仕切る「大ボス」は存在せず、組織同士の関係は流動的で、一組織が摘発されても即座に新たなネットワークが形成される。(P.55)
中南米に興味がある私としては、記憶しておきたい知識。
ーコン民のケースー
筆者が南アからコンゴに行くにあたり一番安い1ヶ月ビザを申請しようとしたら、外交官から「6ヶ月有効のビザしかダメです。料金は5,250ランド(約9万円)です」と。そんなはずはないので裏をかこうと、筆者「OK。それならコンゴには行きません。さよなら。」→「あー待って!一ヶ月でもおk。料金は1,500ランドでいいです」
こんな一悶着があったらしいです。ことの真相は、、、
コンゴの国庫はほとんど空っぽに近いので、公務員にはほとんど給与が払われていません。…ビザ発給は、各公館が自活していくための重要なビジネスの一つです。正規の発給手数料自体が存在しておらず、各公館で適当に料金を決めています。…何としてもあなたに一番料金の高いビザを申請させたかったのでしょう。(P.164)
ひえええそんなことある?同じ地球上の国とは思えないようなことがあるんですね。日本で豊かな生活を送っていると、そんなことも知らずに、気づこうとせずに生きて行ってしまえるんだなぁ。
汚職せずには誰も食べていけないのが現実です。(P.167)
話は少し遡りますが、今年の春頃、世界銀行グループでプロジェクト融資に携わっていたインドの方のお話を聞きました。その講演ではどの国のどのプロジェクトでも、何かにつけて"corruptionがね、、"という話に行きついていました。汚職や腐敗って良識で打破できるものだとおぼろげに思い込んでいましたが、それならここまで問題の根は深くない。貧しすぎて汚職せざるを得ない環境。。
ただ、「生きるため」という正当化はどんな場合にも通用するわけではないというのが現時点での私の考えです。マラウイに行ったら変わるだろうか?
国民生活の壊滅的状況とは裏腹に、コンゴ経済は近年、数字の上では急成長を遂げてる。(P.170)
マクロでみた数字での実態把握には限界があるなぁと痛感したフレーズ。ミクロでそこに住む人たちの生活を見るのが協力隊の2年間の意義。
ー今は南北に分かれたスーダンー
2011年にスーダン共和国から南スーダン共和国が分離独立しました。現時点でもっとも新しい国家だと認識しています。この本ではまだ一国です。
今日も「駆けつけ警護」という新任務を帯びた自衛隊の南スーダン派遣がニュースになっていました。
アフリカへの中国資本の進出はかなり有名ですが、
主要先進国が「人権」や「民主主義」の保障を援助や投資の前提条件とする近年の潮流に対し、中国をはじめとする新興国は「内政不干渉」「政教分離」の原則を掲げて積極的に投資を行う傾向が強い。(P.186)
いわゆる新植民地主義というやつ。同じ過ちを繰り返さないために歴史を学ぶのですが、、、歴史は繰り返す。石油や鉱物資源が豊富だと付け狙われてしまうのか。。
他の近隣国家と同じく、民族紛争もバチバチです。筆者の意見で、
仮に二つの民族が対立関係にあったとしても、人間は単に伝統的に対立しているだけでは相手を殲滅するまで攻撃したりはしないものだ。…特定民族に対する苛烈な迫害は自然発生的に拡大するものではなく、政治権力による計画的な主導がなければ起こり得ないというのが私の考えである。(P.204)
完全に同意なのでメモ。
ー無政府国家・ソマリアー
さて、リアル北斗の拳などと言われるソマリアですが、無政府といっても想像が及ばないんですよね。具体的に。それが詳しく書かれています。
筆者は護衛として雇った私兵集団とともに街に入っていきます。至る所で、武装した民兵たちが通行料をせしめる「検問」がありますが、こちらも武装しており彼らの顔が利くので支払わずにスルーできたそう。一方、武装していない丸腰の車は支払っている。
私は雇った護衛の「強さ」に安堵すると同時に、これは日本で言えば暴力団が支配する社会に等しいと思った。(P.267)
戦闘力がすべての基準になるって戦国時代やん。
筆者の関心は市民の生活にも及びます。
普通の市民はどうやって収入を得ているのか。… 中央銀行が存在しないにもかかわらず、モガディシオの街では「ソマリアシリング」という通貨が立派に通用しており、米ドルとの間にはちゃんと変動相場の交換レートが存在している。(P.270)
この一つの答えは、海外に避難したソマリア人たちが国内向けに送金してくる資金。ソマリアに送金、とか日本では100%理由を問い詰められる上、ほとんどの銀行がとりあってくれないのではと推測します。マネロンの観点からも、送金の安全性からしても最低ランクと言えるんじゃないかなー。
通貨に関しては、
ソマリアシリングの紙幣は、1991年まで存在していたバーレ政権が発行していた紙幣のデザインを、そのまま民間人が印刷しています。中央銀行の民営化ですかね。(P.271)
笑えない。
そして、教育について。現地の小中高一貫校の校長は、
バーレ政権崩壊の年に生まれた子供も、今年でもう十四歳です。ソマリアの一番の問題は子供たちが生まれた時から暴力の中で育つことです。ソマリアの子供たちは、『法の支配』を知らない。意見の違いを銃撃戦で解決する社会で人間が育つということがどういうことなのか、あなたには想像できますか。
私たちは限界に近い中で教育を続けていますが、負けません。武力ではなく話し合いで解決することを教え、平和と民主主義の担い手を作ることが大人の責務です。
理想の先生。こういう人たちの努力が実を結ぶような社会が最高な社会なんだろうなと思う。そのために何ができるのかーーーだめだーーー何かしないとーーー
白戸圭一さんは他にもアフリカ関連の本を執筆されているので、読んで勉強しようと思います。あと自分に何ができるか思いを巡らせてみようと思います。
それではまた!