海外飛び出すことになったブログ

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Book Review『告白』

 

告白 (双葉文庫) (双葉文庫 み 21-1)

告白 (双葉文庫) (双葉文庫 み 21-1)

 

 好き度: ★★★★☆

 

湊かなえさんの作品は2つめだわ〜と思いながら読んだけどたぶん1つめだった。この作品、すっごい。超こわい。

 

ある凄惨な事件が起きて、それにまつわる告白を、各章一人称が変わって登場人物たちが語る。子どもを殺された親、その後任につきあわされる生徒、犯人Bの兄(Bの母含む)、犯人B、犯人A。

 

いじめとか魔女裁判のような集団ヒステリーは、それぞれがそれぞれの論理や感情を持ち出して、ちょっとずつ歯車がずれていって、そのうちもうどうしようもない泥流濁流になってしまうって性質のものなんじゃないかと思った。そして収束させづらいまでになる。

 

本全体を通して読者は全容を把握できるけど、現実に起こる問題だとそうはいかない。どんなに客観的でいようと努めても、自分は既になんらかの立場の人として登場してしまうから。

 

それを緩和=客観に近づけるものがあるとすれば、知らないことがあるっていう自覚くらいだろうなぁ。ソクラテスも言ってました。正義も相対的、見方も相対的。何もかも相対的で、絶対的なものは何もないというのは不安定で居心地が悪いけど、それが私の中では正しいと思うから、絶対的なものは信じ難いし絶対的なものを信じる人も訝ってしまう。でもそれはそれで仕方ないというか、いいとも思う。

 

『ある人が百匹の羊を持つようになり、そのうちの一匹が迷い出るなら、その人は九十九匹を山に残し、迷い出ているものを捜しに出かけないでしょうか。そして、うまくそれを見つけるなら、あなたがたにはっきり言いますが、その人は迷いでなかった九十九匹のこと以上にその羊のことを歓ぶのです』•••俺は、ここに、真の教育の姿を見た。(P.69)

聖書の一部分が引用されている。これは非常に納得。金八先生なんかを見ていると、問題児の方がフォーカスされて、何もない生徒の印象はほぼない。一人のやんちゃをひきとめるために授業を中止するとかそういうん、実際されたらほんまに困るのに!

 

馬鹿にとっては目に見えていること、それも、己に直接関係あることだけがすべてで、中の仕組みを知ろうなどとは思いもしないのだ。だから馬鹿なのだろうが、つまらなかった。(P.244)

これも内容には同意なんだがそういう意識を持っていることが既に傲慢で、謙虚に生きねばーという。

 

支離滅裂な分だけ、その場その場では正直にしゃべっているんだなって感じがある。辻褄があってない分、逆に信用できるんです。(P.307)

 この小説が映画化されたときの監督の言葉。人間は機械じゃないのでこれはほんまそうやなぁと。

 

するめ小説感が今の時点でもうぷんぷん。あーすごい!