Book Review『怖い絵』
好き度: ★★★☆☆
ジャケ買いしかけましたが親が楽天koboで購入していたのでipadを拝借し、初めて電子書籍を完読しました。ーーやっぱり電子書籍苦手!(※この絵は電子書籍版には載せられません、ってやつがあったのには参った)
中野京子さんは最近本屋さんでもよく目にします。調べてみたら早稲田卒の早稲田の先生(専門はドイツ文学)だったので、どんな授業かなーとシラバス検索してみる→ひっかからず。なぜ?(°▽°) でも授業受けられる人はうらやましいなーと思える内容でした!
あつかっている作品は22。
1 ラ・トゥール『いかさま師』
2 ドガ『エトワール、または舞台の踊り子』
3 ティントレット『受胎告知』
4 ダヴィッド『マリー•アントワネット最後の肖像』
5 ブロンツィーノ『愛の寓意』
6 ブリューゲル『絞首台の上のかささぎ』
7 クノップフ『見捨てられた街』
8 ボッティチェリ『ナスタジオ•デリ•オネスティの物語』
9 ホガース『グラハム家の子どもたち』
10 ゴヤ『我が子を喰らうサトゥルヌス』
11 ベーコン『ベラスケス〈教皇インノケンティウス十生像〉による習作』
12 アルテミジア•ジェンティレスキ『ホロフェルネスの首を斬るユーディト』
13 ムンク『思春期』
14 ライト•オブ•ダービー『空気ポンプの実験』
15 ホルバイン『ヘンリー八世像』
16 ジョルジョーネ『老婆の肖像』
17 ルドン『キュクロプス』
18 コレッジョ『ガニュメデスの誘拐』
19 レーピン『イワン雷帝とその息子』
20 ゴッホ『自画像』
22 グリューネヴァルト『イーゼンハイムの祭壇画』
知らん絵ばっかり、いい!これらを全部「実は怖い」という切り口で解説してくれます。高階秀爾さんの『名画を見る眼』ラバーとしてはこういう本は好きだーー
少しメモ。
●『ホロフェルネスの首を斬るユーディト』アルテミジア•ジェンティレスキ(女性)
画家本人の署名があるにも関わらず、こんな雄大な絵を女が描けるはずがないとの偏見によって彼女の父親作or父親との共同作品と間違えられていたというエピソード。現代では、少なくとも私は絵をみて「うまいなーー」と思ったとしても画家が女性である可能性を排除する発想はないので、おもしろい。
女流•••女性のなかま。女性。(多くは芸術家•技術家などを表す語に添えて用いる) ( 広辞苑より)
"女流"棋士とか"女流"作家、"女"医って呼ばれる分野ほどまだジェンダーフリーでない業界なんだろうな。
●『キュクロプス』ルドン
一つ目の怪物と横たわる女性がいる絵です。
愛が憎しみに変わるとき、たったひとつの偏った見方しかできない目は抑制を知らず、自分の破壊力がどれほど大きいかも忘れて暴走する。
愛において相手との距離を測れない者は確かにおぞましい。おぞましいがしかし、そのようにしか愛せない本人にとっては紛れもない悲劇である。尽きぬ憧れと絶望を抱えてガラテアを盗み視るこのポリュペモスが、恐怖を呼び起こすと同時に憐れを誘うのは、肉体には成熟していても頭が子どもなみに未熟であることが示されているからだし、彼の愛は真摯なのにその愛し方があまりに拙劣だということが伝わってくるからだ。
この本きっかけではないけど、奇遇にも数日前「怖い」という感情について考えていました。何が怖いという気持ちを呼び起こすのか?つきつめると源はなんなのか。可能性のある答えとして思い浮かんだものは以下です。
①未知/不知だから
②法益を侵害されるから
①はずーっと思ってきたことで、例えばイスラム教についてよく知らない人がいるとします。その人の持つイスラム教のイメージはテレビで見るISのテロリストに大きく影響されて、「イスラム=テロ=恐怖」という図式になる場合なんかは、知らないことが恐怖の源なんじゃないかなと。
もっと単純なものでいくと、柳が幽霊に見えて怖いってやつです。でも太陽の下でそれがなにか「わかる」と恐怖はなくなります。
ただ、既知でありしかも予想の範囲内で終わるだろうことに恐怖としか言い表せない感情を抱いたことがあります。なんで?となって進んだのが②です。
②法益とは刑法学の考え方ですが、個人的法益には例えば、身体、生命、財産、自由、名誉などがあります。これらが侵害される=不利益を被るのがいや=怖い なのでは?
例えば、どろぼうに入られるとお金が減るから怖い【財産】、ストーカーにあうと殺されるんじゃないかと思って怖い【生命】、など。
ここまでうんうんと考えたものの、友人に指摘されたのは、
吊り橋効果でわかるように、"怖さ"と"ときめき"さえ脳は誤認識してしまうんだから、源とかもっと曖昧なんじゃね?
この説にあそっかと納得してしまったので、思考終わり(笑)
最近時間はあるのに本読むペースが遅いので、しゃんとしようと思います。