海外飛び出すことになったブログ

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Book Review『世界を救う7人の日本人』

 

世界を救う7人の日本人 国際貢献の教科書

世界を救う7人の日本人 国際貢献の教科書

 

 好き度:★★★★☆

 

大好きな池上さんの本!7人は水、復興、命、食糧、教育、経済、国際協力という分野のエキスパートたち。どれも面白いけど、この中で将来の自分のフィールドを選ぶとするなら、復興支援経済かなぁと思った。この先どう生きていこうかなー。。そんなことを考えつつ読み進めました。

 

2010年の本なので、まだ南スーダンは独立していないし、2015年までのミレニアム開発目標の話でもちきりです。ちなみに今は2030年までのSDG(持続可能な開発目標)にむけて世界は奔走していますよ。

 

1.水問題 

世界銀行をリタイヤした人の話を聞いて以来、安全な飲み水の確保は今後先進国でも問題になってくるだろうなーという一抹の不安あり。

 

国際協力の代名詞的なイメージである「井戸をほる」なんかもこの分野ですね。灌漑施設設置とか、上下水道整備とか。コミュニティ開発にも通じる言葉があったのでメモ。

海外からの援助によってもたらされた施設をいかに自分たちのものと思ってもらい、維持に関わってもらえるかどうかが国際協力の成否を分けるのです。(P.34)

 

日本の水道の漏水率の低さ(約3%)など、技術は世界でもピカ一らしいです。(香港25%、ロンドン27%)

 

2.内戦からの復興支援

シビアなやつです。

スーダンは、長い紛争で疲れ切った状態。しかもその間、先進国からの援助も事実上ストップしていた。私たちは、「国家の安全保障」に対して、「人間の安全保障」と呼びますが、国家はそこに存続してもそこに住む人たちの生活が恐怖に脅かされてはなりません。まずは、スーダンの人々が、平和を実感できる社会の「土台」づくりの手助けから始める必要があります。

 

日本の国際協力はこれまで、多くの場合、治安そのものは比較的安定していて、平和状態だが開発を必要としてる国に対して、中長期的視点に立ち、現地で協力事業を行う、というのが基本でした。スーダンの場合は、和平協定直後の紛争処理の段階から、「復興支援」を行い、人々が平和に仕事についたり、生活できたりするような状態に社会をもっていくための緊急で積極的な援助が必要でした。(P.54-55)

 

強い衝撃が走った ソマリアギャングの本↓

locayrica.hatenablog.com

これに近い感じかな?死の危険から逃れるみたいな最低限、最重要の平和の実現というレベルで考えるとこれが一番直接的アプローチかな?

青年海外協力隊で私が携わるのは、まさに「平和だが開発を必要としているところでの活動」。これも確実に必要とされていることなので疎かには絶対しないけど、開発されているのに平和じゃない≒治安が悪い国との差は研究してみたい。secureと感じる世界が一番いいと思うんよなー!

 

スーダン南部には、すべてがない。ない、ないづくしです。復興支援のテーマは多様ですが、あえて優先順位をつけると?

保険(医療・健康)、水、教育(職業訓練を含む)の3つです。(P.60)

 

復興支援を因数分解?するとこういうことらしいです。職業訓練というのは、ずーっと兵士として生きてきた人に、かたぎの仕事(うまい表現がみあたらない、、)を見つけてあげるわけですね。

 

支援をするにあたっても段階を踏むことが大事です。組織を管理したり、運営したり、ものごとの計画を立てて、実行するという「経営感覚」がないと援助を受動的に待つだけになる。そうならないためにも、

小さな試みを成功させて、自信をつけてもらい、徐々に仕組みをつくって、発展させていく。そんなプロセスをつくりあげていくのが私たちにできることだと考えています。(P.70)

 

3.母子の命

自己矛盾ですが、やたら子どもを産みまくる、やたら長寿にこだわりすぎる傾向に疑問を抱いているので、この分野は自分ではないなーと。でも言説にとらわれていたおもしろい事例が載っていたのでメモ。先入観のトラップ!

 

あるプロジェクトで診療所(inアフガニスタン)をつくっても住民が全然来ない。まず考えた原因はイスラム圏では女性が一人で外出できないから」。しかし実際の原因は、「診療所が開設されたこと自体を知らなかったから」だったそう!

先入観を持っていると気づくべきところを見落としてしまうので注意ですね。このケースでは、逆にモスクに男性が集まるというイスラムの特色を生かして、礼拝の際に診療所の情報を流し、認知度を高めるという影響力の利用の仕方もあります。

 

 4.食料

ネリカ米という、「乾燥に強い×収穫量多い」というハイスペック品種の普及の話です。このお米の開発は、1960年代の緑の革命(技術革新によりアジアで急激に食料増産に成功)にもなぞらえられています。いっぱい収穫あればいっぱい人が生きられるもんね。

 

これも自分の仕事のひとつになりうるんですが、、米文化のないところに米文化を人為的に根付かせるのはどうなの、 とか100%賛成できていないのでしばし傍観しようかなと思っています。

 

5.教育

すべては結局教育に帰結する、というのは何度ぐるぐる考えてもそうなるので真理なんでしょう。

 

アフリカの教育について一般論をメモ。

1960年代、アフリカ諸国が次々独立。まずエリート養成校に重点が置かれた。

⇒そのうち一次産品の価格低迷、教育開発のお金は援助頼みに。

⇒80年代世界銀行IMF国際通貨基金)の構造調整融資。途上国の財政健全化のため、国の収入を増やし支出を減らすことを融資の条件とした。

⇒収入増加は簡単には見込めず、支出削減のため実行されたのが公務員(教員)削減、教育予算削減。

⇒教育物資なくなる、賃金カット、給与支払いの遅延

⇒教員スト。教育現場荒廃。

 

ぴえぇぇ。世銀、IMFが意図していた方向とは違うマイナス影響が出てしまった例だな。影響力の大きい組織の決断ってほんまに怖い。。

 

6.経済

民間で少し働いていた自分としては一番とっつきやすい、understandableな領域。

社会インフラの整備の段階を卒業しつつある国に対しては、経済活性化のための支援、お手伝いに転換していくべきと思います。(P.190)

最低限が整った国に関しては、ビジネスの段階に移行しようねって話。JICAじゃなくてJETROの段階に移行するーみたいな。

 

このエキスパートは三菱商事の人、商社マンです。

いわゆる「援助」だけではなく、「投資」や「融資」を通じてのプロジェクト形成、あるいは、ビジネス形成です。その国のプロジェクトやビジネスに対して、先進国の政府と企業が連携して投融資をし、経済発展に寄与する。そんな関係が、途上国の経済発展と自立を促すのです。…こうした仕組みづくりから一緒に始め、環境を整えながら、経済面での投資を行っていく、というプロセスが企業にとっても必要です。途上国政府の貿易投資制度の整備はJICAも取り組んでいることですから、途上国政府への働きかけはJICAと一緒に行うという手もあります。

プロジェクトの仕組み(誰がどこに働きかけるか)を理解してなかったけど、民間の商社が相手国政府と直接やりとりすることもあるのか!エキサイティング!

 

その「働きかけ」とは、、?以下。

とはいえ、国家レベルで行うような仕組みの整備を待っていては、何年かかるか分かりません。では、どうすればいいのか?むしろひとつのプロジェクトを実現に結び付けるための仕組みづくりを求めることです。途上国政府に対し、優遇税制、為替管理、インセンティブ等々、そのプロジェクトのための仕組みを作らせ、プロジェクトを実現可能にすることです。(P.192)

 

そしてキーポイント。

会社やプロジェクトを動かすのは、具体的な個々の顔の見える人間だということです。よく「人脈が大切」といいますが、途上国のビジネスでは、どんな人を知っているかですべてが変わります。(P.202) 

 

情報戦の部分も、、

国際ビジネスを展開していると正規ルートではない情報源の獲得が成否を分ける。国ごとの情報機関の能力が問われるんですね。英国の場合は、映画007シリーズでも有名なMI6(イギリスの情報局秘密情報部)のOBが主体で作った会社があり、彼らが世界中に待機していて、情報収集に当たっています。(P.204)

スパイ!エージェント! 生まれ変わったらNATOの情報部で働きたい!!

 

そしてごり押ししていくタフネス!

フィージビリティスタディの結果に頼るのではなく、まず「このプロジェクトを絶対に実現する」と決めて、その上であらゆる手を尽くしていく。コスト割れしそうなら、優遇税制や輸出しやすくなる仕組みを作ってもらう、または従業員のトレーニング費用を負担してもらう等、現地政府と交渉し、製造コストの低減を図り、プロジェクトをフィージブルにする努力が求められます。(P.206)

 

7.国際協力

これは緒方貞子さんの章。

自分の仕事の枠にとどまるな。顰蹙を買ってでも、でしゃばれ。おせっかいになれ。失敗を恐れるな。(P.234)

彼女の国際協力の本質を示す考えだそう。ここまでの熱い信念もって邁進したいなと思うところです。

 

 

協力隊参加後の進路が悩みの70%を占めてますが、ちょいちょいいろんなところからヒントを見つけていきまーーーす!