Book Review『色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の旅』
好き度:★★★☆☆
村上春樹の作品はおそらく4冊目。大好きな友達が前読んでいた、で、マラウイのドミトリーで発見したので手に取った。
ストーリーを要約すると何がおもしろいかわからんことになるから、要約すべき本じゃないんだろなと思う。そこをあえて要約すると、高校時代の仲良し男女5人組のひとりが多崎つくるであって、大学生になって理由もわからず突如関係が破綻。その理由を探りにいくというもの。
村上春樹って言葉のフローがこじゃれていて小気味いい感じ。好き嫌いはあるだろうけど、きゅんとくるフレーズが散らばっている。
多崎つくると私、共通する思考というのがちょいちょい出てくる。彼の特徴は
「とりたてて破綻がない」p13
この表現が一番好きだった。そして笑った!
しかしつくるのまわりには、個人的に興味を惹かれる人物が一人も見当たらなかった。高校時代に彼が巡り合ったカラフルで刺激的な四人の男女に比べれば、誰も彼も活気を欠き、平板で無個性に見えた。p27
これ、自分が無個性なことを棚にあげて他者におもしろさを求める身勝手さが私と同じやなってくすりとくる。
「誰かを真剣に愛するようになり、必要とするようになり、そのあげくある日突然、何の前置きもなくその相手がどこかに姿を消して、一人であとに取り残されることを僕は怯えていたのかもしれない」p109
つくるさん、、そりゃ怖いよね。。これについて沙羅さんの指摘は以下。
だからあなたはいつも意識的にせよ無意識的にせよ、相手とのあいだに適当な距離を置くようにしていた。あるいは適当な距離を置くことのできる女性を選んでいた。自分が傷つかずに済むように。
つくるは人並みに恋人をつくったりもした。でも暫くしたら別れる。
その年上のガールフレンドに対して、穏やかな好意と健康的な肉欲以上のものを感じることが、彼にはどうしてもできなかったから。p134
色彩がないとか個性がないとか自己評価してきたつくるだけど、沙羅さんいわく、
生きている限り個性は誰にでもある。それが表から見えやすい人と、見えにくい人がいるだけよ。p315
ちょっと救われた!でも、それって没個性を悪としてとらえているからかなーとも気づいた。
題名の「色彩をもたない」の意味は序盤ですぐ納得したけど、「巡礼の旅」というのはそういう曲名が繰り返し作中で出てくる以外、何を意味しているのかずっとピンとこないまだった。でも最後の最後でわかった。何かを信じて巡ること。巡礼だ。信じることができる、つくる。それを自覚している、つくる。自分はそれとは違うなーと最後に思って終了した。