海外飛び出すことになったブログ

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Book Review『謎解きフェルメール』&私が出会ったフェルメール作品たち

 

謎解き フェルメール (とんぼの本)

謎解き フェルメール (とんぼの本)

 

 好き度:★★★★☆

 

これも長年本棚で眠っていて、ぱらっと目を通したらさっさとブックオフ売りに行こうかと考えていた本。だがしかし読んでいるうちに「やっぱふつくしいぃぃ、、、!」となり、売るのやめました。これぞフェルメールの魔力。

 

彼の真作とされる32作品についておおよそ年代順に考察を加え、贋作事件、盗難事件についても触れている本です。以下、見たことのある作品12点を軸に本のおもしろかった記述をまとめます。

 

●『取り持ち女』1656年 ドレスデン国立絵画館蔵

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2011年9月、ドレスデンアルテマイスターにて!「フェルメールっぽくない!いまいち!」としか思わなかったこの作品ですが、それもそのはず。画家人生の初期、物語画→風俗画に路線変更しようとしていた過渡期の作品らしいです。この背景には、1648年スペインとの戦争が終わり軍事権をにぎっていたオラニエ家の権威が失墜し、もともと新教の国であったオランダではさらに物語画の需要が減ったということがあります。業界の先行きをみて路線変更をするフェルメールは経営者っぽくてかっこいい。自画像(一番左)が含まれるということでよく取り上げられます。

 

●『窓辺で手紙を読む女』1658-9年  ドレスデン国立絵画館蔵

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同じく2011年9月、アルテマイスターにて!

この構図は彼のオリジナルではなくて、1630年代ごろからけっこう例があるんですが。オランダ人にとって窓はとても大切なものなんですよ。1年を通して天気が悪いから、せめて窓を大きく開いて光を採り入れようと腐心するんです。(P.32)

フェルメール関係ないけど、アルテマイスターは展示方法が雑で光の反射で絵が見えない事例がめっちゃありました。いい感じの規模感だしせっかくラファエロの神作品もあるので全体的に改善してほしいなーと思います。

 

●『窓辺で水差しを持つ女』1662-5年 ニューヨーク メトロポリタン美術館

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2012年9月、メトにて!メトは7時間がっつりみてもまだ回りきれないメガ美術館です。フェルメール作品を5点所蔵しているらしいのですが、行ったときは2つしか表に出ていませんでした。フェルメール絶頂期の作品群の一つ!

水盤に映りこむタペストリー。まるで下の層から透けてくるようなこの反映像はよほど周到な計算のうえで色を塗り重ねないかぎり、できっこない。(P.50)

 

●『青衣の女』1662-5年 アムステルダム国立美術館

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2012年、渋谷フェルメールからのラブレター展にて!手紙という切り口でのアプローチがよかったです。窓そのものを描かなくとも光の描写によって空間を完成させる至極の技。

 

●『真珠の首飾り』1662-5年 ベルリン国立絵画館蔵

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2012年、国立西洋美術館にて!この特別展全体としてはオランダ感はうすかったんですがこれ単品でトップ画になるあたり、さすがですよね。寓意を徹底的に排除する彼の特徴がよく出た、シンプルで美しい作品。

 

●『天秤を持つ女』1662-5年 ワシントン・ナショナルギャラリー蔵

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2012年11月、ワシントン・ナショナルギャラリーにて!

最後の審判」の絵を背に、天秤を手にする女性。…見かけはあくまで室内画ですが、フェルメールにしては珍しく寓意性を漂わせている…ある研究者がこの絵の天秤の部分を電子顕微鏡で拡大して調べたところ、そこには何も載っていないことが判明しました。(P.50)

えー!どういう意味が隠されてるんだろう?天秤といえば裁判、ジャスティス、みたいなことが連想されますが、最後の審判というキリスト教ど真ん中の要素も。プロテスタントの国オランダで、厳格なカトリックと結婚したフェルメール。その二つかな?

 

●『手紙を書く女』1665-6年 ワシントン・ナショナルギャラリー蔵

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一度目・2012年2月、渋谷フェルメールからのラブレター展にて!

二度目・2012年11月、ワシントン・ナショナルギャラリーにて!

再会できる名画というのも今までの人生でそうそうないのですが、これはそう。女性の表情が究極に暖かくて黄色と青と白と、、、すごひ。

 

●『真珠の耳飾りの少女』1665-6年 マウリッツハイス美術館

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2012年、上野・マウリッツハイス美術館展にて!言わずもがなですね。言わずもがな激混みだったし言わずもがな100%完璧だった。

この作品のような若い女性の顔のクローズアップはフェルメールにしては珍しいもので、…2例が現存するだけ。どちらもその個性的な顔だちのせいで、特定の誰かを描いた肖像画だと思われがちです。でも結論からいえば、これは肖像画ではないと思います。…ジャンルでいえば「トローニー」と呼ばれるもので、不特定の人物の頭部像なんです。(P.60)

 えー!まじ?

真珠の耳飾りの少女 通常版 [DVD]

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 この映画の影響なのかそんなこと思いつきもしなかった。

 

●『天文学者』1668年 ルーブル美術館

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2013年7月、ルーブルにて!ルーブルも言うまでもなくハイパーメガ美術館ですが、文字通り走ってたどり着きましたこの作品に!

見てください、『天文学者』の衣服の明暗の描写の穏やかで丁寧なこと。(P.64)

地図や地球儀が出てくる絵は好きです。

 

●『少女』1668-9年 ニューヨーク・メトロポリタン美術館

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 2012年9月、メトにて!「フェルメールやで、どや」感のある展示方法だったけど「えっ、ぶちゃいくやん」という。上記のように不特定多数の頭部なら、もっと絵的に美しい頭部もあったのでは?(失礼)

 

ここまで、10点。あと2点あります。記録もなかなかしんどい(笑)

 

● 『レースを編む女』1669-70年 ルーブル美術館

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2013年7月、ルーブルにて!これめっちゃ小さくて額縁の大きさがなおさらそれを引き立てる。

ここでは、紺色のクッションらしきものからはみ出した赤と白の糸に注目です。糸というより、まるで滴り落ちるクリーム状の液体、あるいは溶けだした飴にも見えます。…もともとこの人は、大変な技巧の持ち主なのに、それをひけらかすことをしなかった人でした。それがどうやらこのあたりから技巧が先走りをしはじめてきます。(P.66)

 

●『手紙を書く女と召使』1670-72年 アイルランド・ナショナル・ギャラリー蔵

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2012年、渋谷フェルメールからのラブレター展にて!

フェルメールは意味ありげな“小道具”を絵の中に登場させることを極力避けてきた。しかし晩年の彼の作品には物語性が強く見られるようになる。…脚もとに落ちているのは手紙、そして封蠟・・・とすると、この女性は恋人からの手紙の返事でも書いているのだろうか。召使の表情も意味深だ。(P.71) 

 晩年といっても40歳前後の作品。43歳で亡くなった画家でした。

 

以上、12点が私が出会ったフェルメール作品たちです!

ロンドン・ナショナルギャラリーの『ヴァージナルの前に立つ女』『ヴァージナルの前に座る女』の2点も見たはずなのですが、記憶に残っていないため割愛。ボストンのイザベラ・スチュアート・ガートナー美術館も行ったけど『合奏』はずっと盗難中で見られません。

こうして振り返ってみるとフェルメールファンでもないのにけっこう見てるなと!世界のいろんな美術館に行けて幸せ!西洋画大好き!赴任予定のアフリカでは違った類の美術をめでられればいいなと思います。

 

それではまたーー!