海外飛び出すことになったブログ

やっと海外に住みはじめました。ミーハーな海外フリークがthinkとdoをこつこつ記録します。

Book Review『堕落論』

 

堕落論 (280円文庫)

堕落論 (280円文庫)

 

好き度: ★★★★★ 

 

堕落論

元来日本人は最も憎悪の少ないまた永続しない国民であり、昨日の敵は今日の友という楽天性が実際の偽らぬ心情であろう。(P.9)

 

〈青春論〉

 

女の人が、もう二度と会わない、会うと苦しいばかりだから、ということを手紙に書いてよこしたとき、僕もまったく同感した。そうして、まったく同感だから再び会わないことにしましょう、という返事をだして、実際これで一つのくだらないことがハッキリ一段落したという幸福をすら覚えた。今まで偶像だったものをハッキリ殺すことができたという喜びであった。(P.66)

 

死ぬることは簡単だが、生きることは難事業である。僕のような空虚な生活を送り、一時間一時間に身のない生活を送っていても、この感慨は痛烈に身にさしせまって感じられる。こんなに空虚な実のない生活をしていながら、それでいて生きているのが精一杯で、祈りもしたい、酔いもしたい、忘れもしたい、叫びもしたい、走りもしたい。僕には余裕がないのである。生きることが、ただ、全部なのだ。
そういう僕にとっては、青春ということは、要するに、生きることのシノニイムで、年齢もなければ、また、終わりというものもなさそうである。(P.96)

 

〈恋愛論〉

 

私は弱者よりも、強者を選ぶ。積極的な生き方を選ぶ。この道が実際は苦難の道なのである。なぜなら、弱者の道はわかりきっている。暗いけれども、無難で、精神の大きな格闘が不要なのだ。(P.106)