海外飛び出すことになったブログ

やっと海外に住みはじめました。ミーハーな海外フリークがthinkとdoをこつこつ記録します。

Book Review『トリガール!』

 

トリガール!

トリガール!

 

好き度: ★★★☆☆

 

鳥人間コンテストに挑む若者たちの小説。内容はフィクションやけど、背景とか人物とかは実際のもの/ひとに基づいているところもあって、圭のモデルとなったご本人に勧められて読みました〜

 

プロットはみんなが共有してるthe青春物語なんだけども、ものづくり的な意味で勉強になった!

 

本とご本人によると、部員は60-70人とのことなのでまぁ70人とする。メインの登場人物3人はできあがった機体に乗り込んで漕ぐ/操縦する人。まったくものづくりを知らない私としては、あとの67人は設計士?と思ったけど、設計士は6人だけであとの61人は「作る人」らしい。その発想なかった。技師さんってことか。ちなみに操縦する人はエンジンに例えられて機体の一部って考えられるらしい。

 

自分にすとんと落ちる次元に引き寄せると、設計士が作曲家、技師が演奏家、的な?お互いいないと作品が成立しない補完的な関係で、お互いリスペストしあっている的な。違うところもいっぱいあって上手く言えてないけど、ものをつくるって設計して組み立てるんだっていう非常に当たり前の気づきがありました。

 

著者の中村航さんは芝浦工業大学の方なので鳥人間は身近だし、理論的なところもずいぶん実感があるんだろうなーと推測。結構描写が詳しくて「????」ってなるところが多かったです(笑)

 

小説って自分じゃない人の経験を擬似体験できるのが醍醐味ですよなーとしみじみ。

 

飛び立つ瞬間にね、ガタガタ鳴り響いていた車輪の振動が、ふっ、と消えるんだ。その瞬間、不可の種類が変わるんだ(P.48)

先輩パイロットの圭から後輩である主人公•ゆきなに対するセリフ。この感覚とか、実際に経験できるのはパイロットだけなんやけど、すごいわかる気がするし魅力的!いいなーと思ったこの表現は小説中に計3回出てきました(*゚▽゚*)

 

あと、きらめいて見えたセリフを列挙しときます。

でも、やりたいことなんて、最初はないんじゃないかな。そういうのって後からわかると思うの。きっかけなんて縁だし。楽しそうって思ったら、好奇心に乗っかってやってみるだけだよ。(P.86)

物語の序盤、工業大学に入学してやりたいことがまだ明確に見えないゆきなに、親友の和美。「やりたいことがない」という悩みを持つ方へ(笑)

 

プレッシャーや、不安や、突然の横風を恐れる気持ち。そういうものは全部、あの日『風林火山』に置いてきた。あるいは、自転車を漕ぎ続けることで、"自分への期待"や"勇気"や"覚悟"に塗り替えてきた。(P.210)

本番に向けて追い込んでいくゆきな。負の感情をどっかに「置いてくる」っていいな!

 

勇気を持って飛んでほしい。僕も勇気を出すから、君にも勇気を持ってほしいんだ。いいかい?勇気ってのは無謀とは違う。勇気は愛から生まれるんだ。(P.220)

ゆきなと一緒に飛ぶ坂場先輩へ、他の部員から。勇気と無謀は紙一重な部分もあるとわかっているけども、違う言葉として存在する以上、意味するところも完全には同じじゃないよねーという自分への激励(╹◡╹)

 

飛ぶことに対するわくわくって点では、『風立ちぬ』で零戦開発してた人とイメージが重なりました。みんながある種の美学を持っている点でも!

 

日本では9月にこの映画が土屋太鳳さん主演で公開になるそう。青春!みたいな部分ばかりフォーカスされるという危惧はありますが、私のお気に入りの表現たちが出てくれるといいなぁと思ってます。

 

終わり。